「京の公共人材」未来を担う人づくり推進事業
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イベント報告


「京の公共人材」未来を担う人づくり推進事業 座談会

概要  座談会内容

概要

日時 2011年3月30日(水)15:00〜17:00
場所 キャンパスプラザ京都 龍谷大学サテライトキャンパス
司会 富野暉一郎
(一般財団法人地域公共人材開発機構 専務理事兼事務局長)
杉岡 秀紀
(一般財団法人地域公共人材開発機構 事務局総括)
参加者 森脇 俊雅
(関西学院大学法学部 教授)
小西 敦 
(京都大学大学院公共政策連携研究部 特別教授)
本多 千明
(聖トマス大学人間文化共生学部 准教授)
大石 尚子
(龍谷大学地域人材・公共政策開発システム・オープン・リサーチ・センター リサーチアシスタント、同志社大学大学院総合政策科学研究科博士後期課程)



座談会内容

杉岡:  「京の公共人材」未来を担う人づくり推進事業は、3年間の事業で京都府と協働で実施しています。この事業につきまして、内側の視点だけではなく、外側から見たらこの事業はどう見えているのかについてご意見等をいただきたいという趣旨で今回、お集まりいただきました。



 まずは、座談会の参加者につきまして、私の方でご紹介させていただければと思います。
 森脇俊雅先生は、以前から機構関連の外部評価等でお世話になっています。公共政策学会の会長でもいらっしゃいますし、公共政策の分野に非常に明るくいらっしゃる先生で、いろいろなところでご活躍されています。
 小西敦先生も、専門職大学院の認証評価のときからご縁をいただき、今回の機構の社会的認証の評価委員もお願いした経緯があります。もともとは総務省の方でいらっしゃいまして、今は京都大学大学院で教鞭を執っていらっしゃいます。公の立場と学の立場の両方ともご覧になっているということで、今回参加をお願いいたしました。
 大石尚子さんは現在、LORC(龍谷大学地域人材・公共政策開発システム・オープン・リサーチ・センター)のRA(リサーチアシスタント)でありながら、戦略的大学連携支援事業の事務の取りまとめをしておられます。また、ご自身は博士後期課程にもご在籍されています。
 最後に本多千明先生は、聖トマス大学の准教授でもあり、同志社大学でも教鞭を執っておられ、いろいろな大学を見ていらっしゃいます。公共政策と教育学をつなぐところをご専門とされ、学問の枠を超えて総合的な見地から今日はご発言いただけるか思います。
 コーディネーターとしては、今回は機構の立場として富野先生にお願いをしたく存じます。
○ 「京の公共人材」未来を担う人づくり推進事業概要とは
杉岡:  ここからは事業概要の説明をさせていただきます。「京の公共人材」未来を担う人づくり推進事業は、一言で言えば、地域公共人材をつくるためのプログラムであり、緊急雇用対策基金が財源となっています。京都府から委託を受け、機構の方で地域公共人材に資するような求職者をハローワークやメーリングリスト等を通じて公募し、平成22年度は22人、23年度は23人の方を採用させていただいています。
 次に何をやるのかということですが、業務としては大学・大学院に派遣して、資格教育プログラムの5科目10単位を一つのまとまりとして受けていただいて、そのモニタリングをしていただくというのが一つ目の業務です。
 二つ目は、緊急雇用の人材育成の視点もありますので、NPOなどの連携機関に派遣して、週3日程度、少なくとも週2日程度、実際に現場に入っていただき、現場の課題解決をしながら、ご自身のスキルアップに当てていただきます。
 三つ目は、地域公共人材インタビューです。実際に地域で活躍をしている方にインタビューをしながら、われわれとしては、それをネットワーク化したり、データベース化をしたりするわけです。もうそろそろ100件を超えていくと思いますが、これを図鑑としてまとめて、ブックレットで発売もしていきます。こういった社会化、地域公共人材の見える化を業務としてやっていただくことがこの事業の大まかなスキームです。
 平成22年度に採用した22名は、多士済々の方が集まっています。元NHKの方もいれば、新卒の方、博士課程の方、お子さんをお持ちの方、または農業者の方もいます。本当に多分野で、年齢も20代の新卒から60代のリタイアされた方まで、幅広い人材にお集まりいただいています。
 職員の主な就業先ですが、NPOでの研修からそのまま就職された方、企業に行かれた方もいらっしゃいます。また、任期付きあるいは嘱託という形で、公務員となられた方もいらっしゃいます。自分で起業をしたいといった方も平成22年度は特に多くいらっしゃいました。また、大学院進学していくといったキャリアも応援できるようなプログラムになっています。
○ 「京の公共人材」未来を担う人づくり推進事業が生み出す効果
富野:  この事業について皆さんのご意見、あるいは提言をいただきたいと思います。実際にこの事業をやってみて思ったのは「社会にはこんなに素晴らしい人たちがいるのか」ということです。つまり、人材として力が見えないままになってしまっている非常に大きな層が存在しているのです。そういう人たちが、社会の中できちんと機能しないことは、社会にとって非常に大きな損失だということが、目に見えるようによく分かったことが一つです。
 もう一つは、そういう立場に置かれた人たちが、いろいろな意味で社会から疎外されているとか、自分が本当に人間として認められていないとか、いろいろなものを持つような精神的状態になっているのです。本当の力を発揮できれば、人生をもっと輝かせられるのにも関わらず、輝いていない現実なのです。
 そういう方々は、自信を持つというか、あるいは強い精神的なものを持つことによって、自分の今までのキャリアは決してマイナスではないのだという確信を持っていただいています。それといろいろな団体や地域との連携の中で、一人一人について時間をかけてきちんとやっていくと、相当程度、そういう人たちを受け入れてくれる土壌が社会にあるということを、実際に経験してきました。
森脇:

 求職者の方がいろいろな経験を踏んだ上で、自分がやりたいことをこういうプログラムに沿ってサポートしていくことは素晴らしいことだと思います。
小西:  これまでの方の実績を見ると、驚異的な実績だというのが率直な感想です。その理由を一番知りたいと思いました。外から見ていて、三つ理由があるのではないかと想像しているのですが、この成功理由を教えてください。一つは、人選です。モチベーションや能力のある人を選んでいるから、ある種の成功ストーリーはそこで決まっているのかもしれません。二つ目がプログラムによる教育効果があり、それによって彼らが能力や資質を高めて、進路を自分で選択することができた。三つ目は、一つ目と二つ目が交ざったようなことなのですが、選抜されて1年間、こういう経験をしたことが、ご自分の自信になっているのではないかと思います。こういう三つの要素が絡み合って、実績につながっているのかと思うのですが、いかがでしょうか。
富野:  おっしゃっておられる通りです。あえてもう一つ付け加えると、コーディネーターがものすごく強力なのです。一人一人の事情をきちんと受け止めて、その思いをうまくつないで、相手の方にもその気になっていただくし、本人にもそこでいいのだと納得していただくというプロセスがあって、ちょっと普通の教育だけではできないところです。もっと言うと、密度を高くきちんとやると、相当程度お互いにきちんと納得できる結果になるというのは、僕はすごく大きなことだと思います。
本多:  私自身今、大学という機関で4年間教えて、卒業後、全然就職が決まらない学生が非常に多いのです。学生はいろいろなスキルは持っているのですが、それを誰かが注目してサポートをすることが必要だと思います。
富野:  ありがとうございます。大石さんはどうですか。
大石:  一般的に外から見た印象を申し上げると、私も応募したいぐらいいいなと思ったのです。現場と学問と同時並行で、しかも1年間で完結できるというのは、すごくありがたく魅力的です。次に思ったのが、すごく募集が殺到するのではないかということです。ど小西先生がおっしゃられたように、選ぶ方もすごく大変だっただろうし、また逆に精鋭が集まってきたのだろうな、と感じました。
 戦略的大学支援事業のリサーチアシスタントという立場から見ますと職員同士のネットワークがやはり素晴らしいと思いました。地域公共人材は、横にいる人たちとのつながりがまずは必要なので、そういうところでも非常に良い環境が形成されていったのだろうと思っておりました。あと、コーディネートが大変だったのではないかと思います。これは想像ですが、お一人お一人に、すごく丁寧な対応をされていたのだろうと思いまして、その事務局機能も大切だったと思います。
 他方、これは本当に前からの感想なのですが、この「京の公共人材」未来を担う人づくり推進事業に関わる職員の仕事として、大学の職能プログラムについて判定していただくことが一番の仕事だと私は理解しておりました。そこの職員の自覚がどこまであったのか、というところです。資格制度としてのメリット・デメリットというところも、もうちょっと視点が欲しかったな、と思います。これは私たち事務局の設定の仕方も悪かったと思うのですが、もう少しそこが成果物として現れたらというのがお願いです。
○ 京都府北部への事業展開
杉岡:  ちなみに平成23年度の23人のうち5人は京都府北部で採用しているのです。人材面からの雇用振興をして地域振興へつなげていきたいと考えています。
富野:

 特に北部は雇用がない。まず業を起こすために、人のネットワークをつくることがすごく大事で、そこにポイントを置いて今回やろうと思っているのです。やはり地域ごとに需要が違いますから、そこにきちんと合ったシステムをつくっていくことが大事です。
森脇:  以前、過疎地のインタビューをしたことがあって、ある町長が言われたことがいまだに頭に残っています。「過疎」ではない、「人疎」(じんそ)」だ。要は人がまばらなのです。何をするにも、人がいない。何かしようと思っても、役場しか担い手はいないというわけです。お祭りするにしても、何かを作るにしても、人がいない。役場の職員を駆り立てて、やるしかない。それが現実なのです。
富野:  北部では、人を育てても外に出ていってしまうのです。だから、人をつくる仕組みと人を定着させていく雇用や事業を両方つくっていかなければいけないのです。そこに大学の果たす役というのは、すごく大きいのです。
○ コーディネーターの重要性
富野:  地域と大学が一緒にプログラムを実施する際に、コーディネーターはあまり意識されていないのです。今回、われわれが考えていることの一つは、就職マッチングや社会につないでいくコーディネーター、大学間のコーディネートのためのコーディネーター、地域をつないでいくコーディネーター、その三種類くらいのコーディネーターを大学はもう少し持ってもいいのかもしれません。
森脇:  この「京の公共人材」未来を担う人づくり推進事業でのコーディネートは、地域公共人材開発機構がやっているのですか。
富野:  はい。コーディネーターが必要だということで、機構の方で予算も取って、雇わせていただいているのです。専門のトレーニングを、コーディネーターには受けていただいているのです。
森脇:  就業先というか、進路については、やはりコーディネーターが担当しているのですか。
富野:  コーディネーター自身が開拓し、交渉し、問題が出てきたときに調整する。ものすごい大活躍なのです。そういう人たちがいるから回ってきたのです
森脇:  コーディネーターは、どういう人なのですか。
富野:  どういう人かというと、一人はNPOでコーディネートを色々と経験されてきた方です。もう一人は、大学院で博士号を習得された方で企業や行政等に幅広くネットワークを持っています。三人目はフリーのインタビュアーです。
○ 持続的なシステムにしていくための財源
富野:  最後に一つだけ、一言ずつお聞きしたいことがお金の問題です。お給料がもらえ、大学の資格教育プログラムについても受講料が全部無料です。1人当たり、給料で大体百何十万円かかっていて、受講料についても1人当たり20〜40万円かかっています。それだけお金をかけているわけです。しかし、持続的なシステムとして考えた場合、このまま継続できるわけがないというのがあります。そうすると、例えば失業手当と組み合わせて、大学の受講料などのシステムを動かしていくための経費は、別途、予算化する等、財源確保のためいくつか方法を考えなければいけないところがあるのです。
 別に今、ここで正論を言っていただきたいということはないですのが、ちょっと感想でもありましたら、一言ずついただきたいのですが、どうでしょう。
森脇:  財源さえ手当てできたら、きちんとお給料を出し、プログラムに専念するなり、一生懸命やってもらう方がいいと思います。中途半端なことをしたら良くないと思います。
富野:  それは要するに生活費の部分も含めてという意味ですね。
森脇:

 そうですね。アルバイトしなければできない等、他のことに時間を取られてできないのでは、効果が半減すると思います。この事業は、緊急雇用対策ということで、時限的な措置しかないということですよね。
富野:  今のところそうです。それを恒久にするために、どうしたらいいかというのを今年度中にわれわれはやっていかなければいけないのです。ありがとうございます。
小西:  本当にこれは判断が難しいところだと思います。20数名という人数でも、一人ひとりに手厚くお金をかけることについては、高倍率を乗り越えてきた人たちに対してであるから、それだけの税を投入してもいいという考え方があります。一方では、総額でそれだけの税を投入できるのであれば、もっと多くの人数に対して薄まきの支援をすべきではないかという考え方もあります。この両方の価値観があると思うのです。
 今回の方法の正当化は、このプログラムを受講した方々が、今後、どういうパフォーマンスを見せてくださるかに依存するのではないかと思います。今回は3年間の時限ですが、その間に育った方々による成果が社会的にどのように認められるかが大切だと思います。仮に毎年20人でも、それが10年で200人になれば、社会にとって、すごいパワーだと考えてもらえるのであれば、この事業を10年継続し、一人ひとりに対し給料を出すなど手厚く税を投入することが、肯定視されるのだと思います。
本多:  企業から寄附金をもらって、ほかの法人税などを引き下げるとか、1万円ぐらいずつで財団みたいな感じでつくるとか。
富野:  社会貢献みたいな形ですね。
本多:  それを京都の知事が提言されたら、いいのではないかと思います。あとは、受講者の方からも、受講料としては少しでもやはり、みんなが少しだけずつ負担をしていて、ずっと続くようなシステムにつくってほしいと思います。

富野:  行政だけではなくて、やはり力を結集させるということですかね。
本多:  そう思います。
富野:  なるほど。大石さん、どうでしょうか。
大石:  本当に経済団体とか、やはり人材はそういう産業界も欲しいわけですから、その後のまた就職先とか、そういうところにつなげていくためにも、少し補助を出すことはあり得るのではないかという気はします。
富野:  今のところ、中小企業が一番人材を欲しがっています。中小企業が一番苦しがっているのです。
大石:  そうですよね。
富野:  でも、そういうことですね。今日は大変貴重なお話をいただいてありがとうございました。今までやってきたことがこれからさらに社会に定着していくために、この1年間頑張らなければいけないと思っています。今いただいたご意見は大変役に立つものでした。
  (まとめ:一般財団法人 地域公共人材開発機構)


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